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Photo : Rinko Kawauchi
椅子の反映
- 2001
- 椅子:3.5×2.0×2.5cm / 装置:10.0×80.0×80.0cm
- 素材:木材、アクリル樹脂、モーター、ビデオカメラ、赤外線センサー、プロジェクター
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巨大な椅子が部屋の右から左へ音も立てずに流れていきます。
じつは床に置かれた円盤上のミニチュアの椅子がリアルタイムで壁面に投影されています。
見ている人がそのしくみに少しずつ気づきはじめる空間です。
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椅子の影が「音符」に見えたのがきっかけでした。
8分音符、16分音符、32分音符の椅子の影が、円盤上の五線譜に無音のリズムを奏でます。
人が近づくとゆっくり回転をはじめ、人がいなくなるとゆるやかに静止します。
五線譜に記される音の空間と、
実空間の奥行きの中にうまれる「音」の空間があり、
この二つを重ねてみたいと思いました。
椅子を回転させて空間に溶かし込む感覚、
あるいは椅子の空間が人の意識の中で音楽になる瞬間をイメージしました。
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椅子があると、そこに座る人間を想起させます。座れないミニチュアの椅子は、
人の体を小さな空間に引き寄せる力を持っているような気がします。
小さな世界と大きな世界を同時に体験することは、
無意識に自分のからだの大きさを確かめることにつながっています。
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